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去年の夏に単車(アメリカン)で日本一周した。半周もした頃の福井あたりで一人のバイカーに出会った。自分の出身は北海道である。彼もまた北海道から始めて1年間日本中を旅するつもりだという。俺達の目標は一緒だった。すぐに意気投合した。
それから一週間の間、一緒に走りつづけた。途中では大雨もあった。でも、日本海のすばらしい夕日を見ることも出来た。
一週間後、鹿児島にたどり着いた時彼は言った「兄さん(彼は俺をこう呼ぶ)俺、明日は沖縄に渡るよ」その日は、ぜいたくに旅館に泊まり(それまでは全て野宿)居酒屋に行って二人で飲みまくった。
次の日、いつもと変わらずに単車に荷をくくりつける。そして、いつもと同じように2台で走り出す。いつもと違っていたのは、二人の会話が少し少なかったことだろう。
桜島のふもとで彼は俺に使い古されたジッポーを渡した。彼もまたそのジッポーはかけがいのない仲間にもらったものという。
結局俺は時間の都合で沖縄に渡ることが出来なかったのだ。たった一週間一緒にいただけのこの俺に彼は大切なジッポーをくれた。涙が出そうだった。
硬派を気取っている自分の心がこれほどまでに動かされることがこれから何度あるだろう。彼の気持ちが十分に伝わった。かたい握手をかわして俺達は背を向け合って走り出した。「じゃ」と互いに一言ずつ残して。
あの時握手をかわした手に今、彼のジッポーを握っている。彼のラッキーストライクに火をつけていたジッポーは、今は、俺のキャメルに火をつけている。いつの日か、俺もまたこのジッポーを誰かに渡す時が来るのだろうか。まだわからない。とりあえずまた旅に出てみようかと思う。
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